カープ雑誌まとめその2

前回、ユ関連雑誌のまとめを書いたのですが、自分でもびっくりするほど長くなっていたので、優勝後に発行された雑誌の追加分については新規記事を作ることにしました。

 

前回同様、購入した雑誌のみのレビューです。また意見には個人差がありこの記事は百パーセントの主観です。

本記事では各雑誌などを写真・記事・記録・アツ・福井の5種類の評価基準を設け、それぞれを星0~3で評価しました。アツと福井に関しては★0=掲載なし、★1=一応載ってる、★2=割と充実、★3=ファン早く買え、です。

また今回の記事は優勝から時間がたって発売されたものについては若干辛めの評価をしています。時間があったらなら練れるだろうというアレです。ご寛恕ください。

 

 というわけで以下です。

 

プロ野球2016シーズン総括BOOK―優勝!広島カープ25年ぶりの歓喜 (COSMIC MOOK)

プロ野球2016シーズン総括BOOK―優勝!広島カープ25年ぶりの歓喜 (COSMIC MOOK)

 

写真★★★ 記事★★ 記録★★★ アツ★★ 福井★★

ジャクソンの写真が4カットも贅沢に載っているので★3です。全体的にすごく写真がよく、眺めるタイプの本。ほぼ選手紹介+シーズンベストゲームで、あとは過去の優勝についてと「空白の25年」についての記事が少し。主力選手は見開きでカッコいい写真がたくさん載っているので主力選手ファンの人は眺めてにやにやしましょう。

 

広島東洋カープ 25年ぶりセ界一! (洋泉社MOOK)

広島東洋カープ 25年ぶりセ界一! (洋泉社MOOK)

 

写真★★★ 記事★★ 記録★★ アツ★ 福井★

新井、黒田、誠也がおおきめの扱い、そのほか緒方監督はなぜ変われたのか、OBインタビューなど。選手紹介はかなり良い出来で、セレクトされた写真は各選手の個性が出たもので、キャプションがかなり丁寧かつ周辺情報を拾っているのが好感度が高い。判型は小さいけどいい本です。誠也の記事は森田くん筆。

 

 写真★★★ 記事★★ 記録★★★ アツ 福井

凱旋試合+セレモニーのレポート、レジェンド(衣笠、外木場、大野、川口、小早川)など。全体的にはパリーグの首位争いのほうが多め。千葉功さんの「記録の手帳」が今シーズンのカープのまとめをしているので興味がある方は買いです。あとサファテのインタビューがあるのと菊池が迎コーチ補佐がいかに優秀な釣りの師匠であるかの話をしています。

 

写真★★★ 記事★★★ 記録★★★ アツ 福井

冒頭のエッセイが西川美和さんだったのでとにかく読もう。この「どうして広島東洋カープは、こんなにも人生そっくりなんだろう」と題されたエッセイが、カープファンならずとも何かを応援している人間のハートに突き刺さるデキ。あとは黒田新井対談、苑田スカウト部長インタビュー、タナキクマルノムインタビュー、そして村瀬さんの「鈴木誠也が"神る"まで。」という誠也の人生に迫る記事はこれまた味わいがあっていい。お父さんと広島の銭湯に入った時のエピソードが特にいい。早く買いましょう。

 

 

 写真★★★ 記事★★★ 記録★★ アツ 福井

 

タクローさんと野村、中崎、石原さんのインタビューが目玉。石原さんになかなかスポットが当たらないのが口惜しかったのでファンは買いましょう。ただしインタビューはどれも優勝前のものです。あと毎号べらぼうに面白い西村通訳の連載が今回はマクレーンなのですが、すごくいいエピソードなので読んでほしい。

「本誌創刊以来初の優勝特集号!」っていうあおりがメチャメチャ悲哀があるので(創刊23年…)本誌創刊前後に生まれた人間の気持ちになれます。あとどうでもいいがアスリートはいつから記名記事をやめたんだろう。

 

カープ 25年の軌跡 (TJMOOK)

カープ 25年の軌跡 (TJMOOK)

 

写真★★ 記事★ 記録★★★ アツ 福井★

タイトルは25年の軌跡ですが半分くらいは創設からの歴史。インタビューは菊池のみ。V戦士紹介ではアツがいませんでした。福井がマジック20を点灯させて本当に良かった。変わったところでは野球鳥きのしたとHARAYAの紹介など。後半はほとんど過去の記録ですが、この25年の開幕投手最多勝の一覧など切り口は面白いものもあり。

カバーを外すと黒田さんの200勝試合の記念撮影ポスターになっています。欲を言えばカバー下が赤字に球団ロゴなので、2色でいいから同じデザインにしてほしかった。 

 

週プレNo.43 10/24号 [雑誌]

週プレNo.43 10/24号 [雑誌]

 

 写真★★★ 記事★★★ 記録 アツ 福井

 これはごらんのとおりふつうの週プレなのですが、前述の村瀬さんの「仏ってる?悟ってる?禁断のカープ坊主座談会」という激ヤバ企画が最高に面白いので紹介。カープ坊主の会150名を代表する6人4宗派のカープ坊主たちが負けた日のスポニューを修行と思い、物を投げたり罵声を浴びせたりしながら心の平穏を保つ様子がうかがえます。そのあとの企画が83歳のおばあちゃんが登場する「天国に一番近いカープ女子座談会」なのもヤバい。

 

広島アスリートマガジン特別増刊号 2016 カープ優勝の軌跡

広島アスリートマガジン特別増刊号 2016 カープ優勝の軌跡

 

 写真★ 記事★ 記録★★★ アツ★ 福井★

ごめん、正直ちょっと期待外れだった! 優勝後インタビューとれてるかなと思ったんですが過去のインタビューなどをつなぎ合わせて選手紹介にして、写真も過去号表紙の別カット、なにより勝った試合全部載せるというコンセプトが中国新聞とかぶっていた。これまでアスリートを全然買ってなくて1冊買おうかな、という方には勧められるかな…。

 

絶対応援!! 広島カープ (DIA Collection)

絶対応援!! 広島カープ (DIA Collection)

 

写真★ 記事★ 記録★ アツ 福井

写真の解像度がめっちゃ低くてびっくりしました。全体的にあんまりキレがない。 「面白選手紹介」はWikipediaとかこいせんwikiから拾ってきたようなネタなので脳髄にインターネットを接続したファンにはあまり価値なし。

唯一他誌でやってなかったのが全国緋鯉会連盟総代表の山村さんへのインタビュー。前代表苅部さんのカリスマ性などが語られるので関東外野の民は読んでみてもいいかもしれません。

 

 以上です。また購入したら追加レビューします。過去の週刊ベースボールも発掘されたのでそちらは前記事のほうに(余裕が出たら)追加しておきます。

 

カープ関連雑誌などのまとめ

ユしましたね。3連敗してもまだユしているのでユはすごいなと思いました。次のユは25年より早くしてほしいです。

 

さて、猫も杓子も赤い雑誌などを出していて大変なので、手元にある今年刊行された赤い雑誌や本をまとめました。要は買い物記録であり重複購入防止で、意見には個人差がありこの記事は百パーセントの主観です。

本記事では各雑誌などを写真・記事・記録・アツ・福井の5種類の評価基準を設け、それぞれを星0~3で評価しました。アツと福井に関しては★0=掲載なし、★1=一応載ってる、★2=割と充実、★3=ファン早く買え、です。

 

開幕前系

今年はちゃんとCS行こう、あわよくば優勝しよう!という謙虚な態度。

球団承認 Carp SPIRITS 2016 (タツミムック)

球団承認 Carp SPIRITS 2016 (タツミムック)

 

記事★★★ 写真★★★ 記録★★★ アツ 福井★★★

今更紹介するまでもない手帳以上のカープ手帳。スタメンや勝敗を記入するスケジュール欄のほか、広島県の各都市観光ガイドや「とっさの英語&スペイン語会話例文集」(例:「あなたのファンです」「サインをください」「握手してください」)など実用方面では段違いの充実度。選手インタビューも広島の街への印象など私生活面にも触れたとことんファン目線の一冊。西村通訳インタビューもあるぞ。去年版(Carp SPIRITS 2015 (タツミムック))も読み物として面白いのでアツファンはそっちを買おう。最後に、編集者の方のご冥福をお祈りします。

 

広島東洋カープ読本2016

広島東洋カープ読本2016

 

記事★★★ 写真★★ 記録★★★ アツ★★★ 福井★★★

全体的に記事は充実。写真は一岡の白目むきかけてる写真が1ページバーンと貼られるなど謎セレクトもあり。引退選手のその後を羅列した特集では、遠藤が宝石卸商の営業であったり仁部が秋田精工に就職したり田中由基が実家の造園業を継いでいたりすることが報じられ、果てはアンダーアーマー川崎店でレンチを使う齊藤店長の写真を掲載するなどツボの抑え方が若干おかしい。

アツ記事は扉写真が完璧にラーメン屋の店主で、キャンプ中にあった「プホルス打法」報道を「記者が勝手に書いただけ」とブッタ切る様子が掲載。福井の記事は開幕前だけありセンターカラーで大絶賛、シーズン中に心が折れたときによく読んだ。

 

シーズン中系

このころもまだ「カープもしかして今年強いかもしれない」テイスト。

ベースボールサミット第11回 特集広島東洋カープ 25年ぶり優勝へ『永久不変のカープ愛』

ベースボールサミット第11回 特集広島東洋カープ 25年ぶり優勝へ『永久不変のカープ愛』

  • 作者: ベースボールサミット編集部
  • 出版社/メーカー: カンゼン
  • 発売日: 2016/07/19
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
  • この商品を含むブログを見る
 

記事 ★★★ 写真★★ 記録★★★ アツ 福井

表紙掲載選手インタビューのほか、各紙番記者やおなじみの面々のコラム、苑田スカウト部長、松本スカウト、シュール、水本二軍監督、山内さんなどのインタビューを掲載。どれも取材日付が載っており「神ってる」前夜の誠也インタビューをかみしめながら読める。写真は巻頭はカラー、本文掲載分は紙質が悪い影響が若干ある。福井とアツについては影も形もない。南無。

 

マジック点灯前後系

ここらへんから各社に潜伏しているカープファンのうっぷん晴らしが始まっていて、妙な読み応えのある記事を含む雑誌が多数刊行される。

記事★★ 写真★★ 記録★★ アツ 福井★★★

M20点灯試合直後の福井インタビュー掲載。発売直後に福井抹消。ウッ……。インタビュー自体は福井節が楽しめ、河合じゅんじさんの「私情の空論」も福井。他にマーティと松長通訳のインタビュー、「Locker  Room」では水ぶっかけが梵から始まったことが誠也によって語られ、用具紹介コーナーでは一岡登場。でも助っ人特集にニックがいなかったのはどう考えてもおかしいので★2。

 

記事★★★ 写真★★★ 記録★★★ アツ★ 福井★★

全ページカラーなうえ、朝日なのでカメラマンがよく結果としてとても写真がいい。あと各選手の甲子園での写真が掲載されているのもとても朝日。データスタジアム社執筆記事は数字に弱い人間にも優しいのでありがたい。

番外編として暗黒時代特集記事を左に90度傾けないと読めない仕様にしたことを大絶賛したいところ。この暗黒記事はジョー古河の入団や「あつかんリレーがこの年だけ稼働」、建さんが審判向かってボール投げて退場事件、中東がFASのMVPに選ばれるもその試合で骨折事件など、明らかにダークマターの吸いすぎによるトピックが取り上げられているので暗黒面に落ちたファンにおすすめ。

 

躍進する広島カープを支える選手たち (KAZIムック)
 

 記事★★★ 写真★★★ 記録★★ アツ★★ 福井★★★

出版社の野球ムックのページを見るとあまりに唐突に出されている本。基本は各選手の投球・打撃・守備の連続写真に、これまでの経歴などをサックリまとめた記事が付属して1見開き。時折インタビューや変化球の握りについての解説などが入る。過去のムック製作に際して出た写真をまとめたものかと思いきや、各選手解説が妙にマニアックかつファン目線、さらに最新コメントが入っていて明らかにカープファンの仕業なので買いましょう。福井はインタビューもあるぞ。

 

Vじゃけえ広島!! Road to VICTORY (広島東洋カープ)

Vじゃけえ広島!! Road to VICTORY (広島東洋カープ)

 

記事★★★ 写真★★★ 記録★★★ アツ★ 福井

「マジでVじゃけえしやがった」とインターネットをどよめかせた一冊は、ジャクソンはハイチュウ、ヘーゲンズはうまい棒が好きなことがわかる上にメチャメチャ面白いジャクソン×ヘーゲンズ対談が必読。大野達川対談ではたっちゃんは最近うどんとかそばを例えに使うことが増えたという本人の証言が読める。中四国限定なので遠い人は通販しましょう。

アツは掲載されてないが週ベ恒例「ベースボール写真館」がアツユニを着た祖父と孫のツーショットで、やっぱりアツの支持層って年齢高めの男性なんだ……という理解が得られたので★1。

 

優勝系

25年間溜めに溜めた人たちが大爆発しているので読みごたえに溢れるラインナップ。あんまり「荒稼ぎするぞ~~」感はない。

記事★★★ 写真★★★ 記録★★★ アツ★★★ 福井★

表紙の安部がメチャメチャかわいいと思いませんか? ★3です。

優勝決定試合の経過、優勝会見、ビールかけがカラー掲載。順位推移グラフで「今年のカープはもしかしてすごく強かったのではないだろうか…」と上から目線で振り返ったり、担当チームが初めて優勝する担当記者のうろたえた手記を「うんうん、わかる、そうだよね」と謎の共感を持って読める。

そのほか、野球浪漫が赤松、ファーム記事に桒原。「Locker Room」ではアツが「去年のシーズン中からどうもボールが見えなくて……」という早く眼科行けエピソードを披露している。試合中はコンタクトらしいので、今オフは達川に弟子入りするといい。

 

記事★★★ 写真★★ 記録★★★ アツ★★ 福井★★

初っ端から新井の色補正がビミョーで突貫工事かと思いきや、ちゃんと作りこんであるやっぱり週刊ベースボールはいいねムック。 2016年全試合のスタメンと登板投手記録は記念品。「歴史に名を刻んだ赤ヘル戦士たち」コーナーでは、今シーズン一軍に登録されたすべての選手が紹介されているので、土生や庄司、船越などの初登録選手のファンや、2016年に江草が何をしたのか確認できず不安な人におすすめ。

個人的にはメンバーリストに打撃投手やトレーナー、スコアラー、通訳、広報などを入れてくれたことで相澤や苫米地、河内、篠田の名前が優勝本に刻まれたことがとてもうれしい。ところで打撃投手の背番号、山本芳彦さんだけ空欄なのだが誤植なのか背番号がないのか有識者の方、教えてください。

 

カープV7グラフ ?25年ぶり リーグ優勝への道

カープV7グラフ ?25年ぶり リーグ優勝への道

 

記事★★ 写真★★ 記録★★★ アツ★★ 福井★★

大本営発表はまず本文用紙が分厚く「保存しろ!!!」という強い思いを感じさせる。中身は9割が「カープが勝った日の新聞記事と写真とたまに球炎」であり、今シーズンは負けてないような錯覚を覚えさせる、まさに大本営といえるヤクい編集がなされている。来年以降つらくなったらこれを読もう。

 

記事★★ 写真★★ 記録★★★ アツ★ 福井★

基本的にはサンスポの記事の総まとめ本。記事を新聞ではない形態で所持したい人向け。松田元オーナーの優勝インタビューが一番原語に近い形で掲載されている気がする。緒方監督ヒストリーでは現役時代の松葉杖姿の写真が拝めて、いったい誰が得をするのかよくわからないがありがとうございます。

 

 記事★★ 写真★★★ 記録★★ アツ★ 福井★

ビールかけの写真とコメントが豊富。確認はしていないが参加選手全員のコメントがありそうなので、オスカルや梵の感想を読みたい人はこの本で。主力選手の写真は見開きでかっこいい。記事量はそんなに多くないが「1975&2016優勝胴上げジャンボポスター」という需要のよくわからない付録が妙にときめく。

 

記事★★★ 写真★★★ 記録★★★ アツ★★ 福井★★

前掲のサカダイと版元が同じであり、万が一中身が……と思ったが特に心配はいらなかった。優勝試合の記事は森田ゆとりくんが書いています。

優勝試合記事と全試合結果のあとに各選手の紹介がくる構成。各選手の名前の書体が最近のラノベみたいなオシャレさでハーモニーを感じる。黒田と新井はこれまでの記録がまとめられているのでファンの方はお買い求めください。

そのほか、田中と誠也をスカウトした尾形のインタビュー、共同通信記者による助っ人のケアとスカウトについての記事、めっちゃいいジャクソンスマイルなどが掲載されている。「年度別ドラフト通信簿」は06年ドラフトからの掲載で、個人的にはここ3,4年についての評価はしなくてもいいんじゃないかなみたいなところはあるがアツさんの獲得が◎になっていたので全然問題ないです。

 

祝!! 2016広島東洋カープ優勝記念号(Baseball Times特別編集)

祝!! 2016広島東洋カープ優勝記念号(Baseball Times特別編集)

 

記事★★ 写真★★ 記録★★★ アツ★ 福井★ 

浮かれるファンにそれなりに冷水をかけてくれる慎重派BT謹製優勝ムック……というのは完璧な主観で、個人的に褒めてほしい選手が活躍相応にしか褒められていない点に不満があるだけで、活躍している選手はちゃんと褒められているので活躍した選手のファンにはおすすめ。それでも主張するけど次世代捕手は育成されていると思います。フォークが捕れるようになったし。

 

以上、9月19日現在手元にある雑誌についてまとめました。今後新規購入ならびに古い週刊ベースボールが発掘され次第追加していきます。 

 

 

 

 

 

 

言語化の不自由

 下の記事とはまったく違う話をする。ここからの「具合」はメンがヘルほうの「具合」なのでそういう話が嫌いな人は発言小町でも読んでいてください。

 

 具合がわるい。

 わりと頻繁に具合をわるくするたちで、そのたび頓服薬でどうにかしてきたのだけど、今回はしっかり根深く具合がわるくなったので、医者に行って毎食後と寝る前に薬を飲むことにした。

 飲むことにしたというのは、今かかっている病院がオーダー通りに処方箋を書いてくれる、旧32条下ではおそらく天国であったようなタイプの医者ばっかり揃えているからだ。これとこれとこれをください。何日分。それで処方箋を書いてもらえるので、病院とはいったい何ぞや、診断とは何ぞや、と薬局の待合室で哲学じみすらする。といってもカウンセリングに割く時間がない以上、いまは脳味噌に化学物質をぶちこむ一択しかなく、それなら変なものを試すよりは、自分の慣れた化学物質がよいなといったレベルの話だ。

 具合がわるいときには、精神状態や感情の言語化にはなはだしい障害が発生するので、具合がわるいという主張がうまくできなくなる。現時点では薬を飲んで改善している感覚はまったくないが、薬をのめばそれなりに体が動くようにはなるので、服薬を継続している。感覚が言語化できるようになるころにはだいたい治りかけというあんばいだ。10年以上よくなったり悪くなったりをして、なんとなく付き合えるようになってきたから、わたしもまだ可塑性があるんだろう。

 

 しかし、医者、あんなにフランクに処方箋を書いてくれていいのだろうか。わたしはありがたいのでいいんだけど。

前田健太投手について

 私にとって前田健太という投手は、大野豊と同じくらい特別な存在だ。というと大野豊がいかにスペシャルであるかについて語らなければいけなくなるので、この導入は明らかに失敗なのだが、続ける。

 

 私がはじめて前田健太投手を生で見たのは2008年の4月5日のことだ。

 当時の私は受験生という世を忍ぶ仮の姿を装う、愚にもつかないフリーターだった。旧市民球場最終年と大学受験を非常に個人的な事情で被らせてしまい、自分の6年間にわたるバカさ加減のしりぬぐいがこんな瞬間に訪れるなんてと歯噛みした。どうせならもう1年フリーターをやって広島に行きまくればよかった。でもさすがに24とかで大学入るのつらい。そんなことを考えてながら、最後にもう一度市民球場で野球が見たいと、英検2級に払うはずの金を、横浜戦の外野自由のチケットに変えた。ほんとうは中日か阪神か、東京では見られないカードがよかったのだが、予備校生の身分で選べる日は少なかったのだ。そして4月4日の夜、目黒でのバイトを終えたあと新宿西口から夜行バスに乗った。

 まだ予告先発なんてなかった頃だったので、消灯前の車中で携帯で野球chを見て、どうも明日は2年目のPL卒のあいつが投げるらしいという情報を得た。佐々岡があんなに簡単に18を譲るような男だから、きっといい投手なのだろう、だけど2年目で18って早すぎないか? 齊藤はいちおう1勝したからいいけどさ。そんなことを思って、携帯の電源を切った。

 

 翌朝バスセンターについて、本通りのマクドナルドで身支度を整えた。今はどうなっているかわからないけれど、当時のマクドナルドには広島版のデイリースポーツと日刊スポーツが置いてあった。そこで前田健太のデビューを知った。記事には1年目の成績が良くて、なんだかすごく期待されているようなことが書いてあった。黒田がいなくなって、先発陣は2016年よりずっと絶望視されていた。そこに添えてある写真を見て、こんな細い選手が大丈夫だろうかと思った記憶がある。

 午前中は、旧友とひろしま美術館に行って、モネを見た。12時ごろに市民球場の前で別れて、外野席に向かった。旧市民球場の芝はマツダスタジアムと比べればきっとぼろぼろで、座席も狭くて、もし今座ったら不快な思いすらするのかもしれない。でも4月の市民球場はぼんやりあたたかくて、外野で今はもういない選手たちが本塁にボールを投げるのを見るのが心地よかった。やっぱり本拠地は違うのだ。

 

 まっさらのマウンドに立っていたぴかぴかの背番号18は、遠目から見ても細くて折れそうだった。今あんなに立派な体に育ったのがウソに思えるくらいに、華奢な選手だった。

 前田健太は、初回、簡単に2アウトをとった。デビュー戦とは思えないくらい落ち着いていた。三番の金城に対して、すこしてこずった。結果、四球でプロ初のランナーを出した。そこからだった。前田健太は四番村田――いまよりずっと怖かった村田に対しながら、さっと一塁に牽制球を投げて、金城を刺した。そして堂々とベンチに戻った。

 一瞬だった。プロ初登板で、四番を相手にしながら、何食わぬ顔で牽制で仕留めて見せた。弱冠にも満たない19歳の少年がだ。技術の良しあしは正直私にはわからない。だけど、この選手は本物だと思った。絶対に大成する、18にふさわしい選手になると思った。

 

 その日のスコアがこれだ。

 http://www.nikkansports.com/baseball/professional/score/2008/cl2008040503.html

 天谷のサヨナラ安打からの、ヒーローインタビュー「美味しいお酒を呑んでください」の日として記憶している人が多いと思う。私も生まれて初めてのサヨナラ勝ちに、ホームチームだけの特権に、うかれた。あるいは石原さんが4安打した日として覚えている人もいるかもしれない。

 でも私が試合を振り返って一番に思い出すのは、前田健太の牽制なのだ。私が前田健太に惚れたのは、ピッチングでも守備でも打撃でもなく、あの牽制球だった。

 

 2008年4月5日のスターティングメンバーの半分以上がチームを去った。若きエースは、球界のエースになってくれた。間違いなく稀有な選手だし、そのはじまりから一旦のおわりまでを見られたことは、幸福以外の何物でもないと思う。当たり前のように彼が投げていてくれたことのありがたさに、おそらく来年改めて気づくのだと思う。

 

 どうか彼が怪我なく、アメリカの地で思うような活躍ができることを願う。そしていつか、もしよければ、嫌でなければ、もういちどカープのユニフォームに袖を通してほしい。

#28 その2

 開幕して3ヵ月弱がたった。懸念していたほど、わたしは彼のことを嫌がっていない。チーム状況が最悪でほかに誰も四番を打てなかったからか、彼が見たこともないような着実さで打点を重ねていたからか、スタメン発表に顔をしかめることもなく、タイムラインに流れてくる写真にも反応しないでいられる。

 

 試合を見るたびに、むかし自分が彼のことをどう思っていたのかが、ぼんやり浮かび上がってくる。

 わたしはあのみっともない守備が好きだったし、力の加減がちっともうまくないスイングも好きだったし、どうしてそんなにギャグ漫画的なのだろうと首をかしげる走塁も好きだった。

 そのころいちばんの贔屓にしていたのは森笠だった。残念ながら森笠はわたしのべたべたに甘い目から見てもカープを背負う選手ではなくて、そのポジションに立つのは、同級生で同期入団*1である彼だと思っていた。東出といっしょにせっせとエラーの山を築き上げている真っ最中は、かわいそうな小山田やミンチーに同情してふたりにキレていたけど、それでも将来四番を打つのは、カープときいた時に真っ先に名が挙がるようになるのは、絶対にこいつだと思っていた。もしかしたら当時のフロントの意思を丸呑みにしていただけかもしれなくても、いちおう数字とか愛嬌とか体の大きさとかを咀嚼したつもりでそう思っていた。「とてもひどい」守備が「かなりまずい」になり、「うまくない」になり、バットがボールにあたってそれがすごく遠くまで飛ぶようになり、ホームラン王というタイトルがついてきて、オールスターに選ばれたり、代表に選ばれたり、チームの顔として彼がいろいろなひとに愛されるのを見るのはほんとうに嬉しかった。

 だからわたしは泣いたし怒ったのだ。

 

 いま彼のことを応援している人たちを羨ましく思うこともある。わたしも応援歌は歌う。声援もおくる。タイムリーが出たら、ファーストの守備につく彼の名前も呼ぶ。でもそれはほかの誰に対するものとも違う、なにかがこと切れたあとの声だ。

 わたしは彼のファンでいるためにものすごく大切なものを手放したのだと思う。それを持ち続けていたひとのことを立派だと思うし、新たに彼のファンになったひとには、ずっと彼のことを好きでいてほしいと思う。彼はそれだけの魅力がある選手だと思うし、それ以上に人間として、たぶんすごく素敵なひとだ。

 昔には戻れない。悪いとか許さないとか嫌いとか顔も見たくないとかのネガティブな感情はもうなくて、シンプルに、もう、ファンではない。わたしは一度彼の熱心なファンで、あの報道を聞いた瞬間にそうあることを取りやめて、そのあとの数年間は、怒りと嫉妬で彼が何をしていたのかも見なかった。そこで全部は終わっている。その先は愛するチームに戻ってきた、気がよくて、よく打って、いつかよりだいぶ守備も上手くなって、無性に懐かしい誰かのことを呆然と眺めるだけだ。いまはそれで納得している。

*1:前原さんリスペクト的表現

黒田の復帰について

 年始に賀状をたくさんいただいたのだが、うち、プライベートなモノのほとんどに「黒田」の文字が躍っていたのは、わたしの知人友人諸氏がわたしと同様にものぐさもとい多忙で、27日あたりから年賀状を書き始めた証左だ。

 

 というのはどうでもよくて、やっぱり黒田のニュースは全野球ファンにとってとても大きいものだった。仕事納めの丑三つ時にいきなり舞い込んだ第一報。いや噓だろ。スポニチ? よくできたコラじゃねえの? というツイッターの混乱を経てアップロードされた中国新聞の紙面に、観測範囲内のカープファンは狂喜した。その夜には高級なお酒を開けたアカウントの多かったこと。ハレの暁というのは今日ではない!と思いながら、わたしもピルクルを開けた。下戸だから。

 

 もうさんざん言いつくされたことではあるけれど、この決断を男気という言葉でくくってしまうのはとても簡単で、だからこそためらいがある。21億円を捨てるというのは「すごくわかりやすい指標」で、野球ファンでない人たちに説明するときに、非常に便利だ。だが21億-4億の17億円が黒田博樹のスゴさかと言えば、全然そんなことはない。

 データ的なモノは得意でないので簡単に書くが、黒田博樹39歳は、5年連続フタケタ勝利という、超一線級のメジャーリーガーだ。小学生の時に野茂が海を渡った世代からすると、メジャーリーグというのは夢の塊だ。

 そして黒田はいまだに夢を見せてくれる数少ない日本人メジャーリーガーだ。復帰の報せを聞いてこんなに嬉しかったのに、四十路の黒田がメジャーで投げて援護が普通にあってビシバシに勝ったら……という妄想が簡単に沸き立つ。ダルビッシュ田中将大という今まさに絶頂期にあるピッチャーと変わらない。

 06年の残留騒動のあたりから、彼は大きな夢を託せる野球選手のひとりだったわけだが、それが海の向こうで幾倍にも膨らんで、ついに帰ってくる。というのが、わたしにとっての黒田復帰の価値だ。

 

 黒田には『クオリティピッチング』という著書がある。第一作の『決めて、断つ』に続くもので、『決めて、断つ』がどちらかというといかに自分はプロになり、メジャーに行くことを決めたのか、という自伝+メンタル本であったのに対して、いうなれば「野球道」的な本だ。いかに「投げられる球」を増やすか、追い詰められるような状況にいたらないようにするか、まったく違った環境にアジャストするか。

 ここで、黒田は本当に全部をしゃべっている。本書を読むとわかるのだけれど、黒田は積み重ねる人で、毎年毎年、すべてを調整している。ばれてもいいのだ、去年までのことだから。というふうにわたしはとらえている。そして去年までで得た実りを、黒田は伝えようとする。Number Webの刊行当時の記事を見ると、自分から、こうしたらわかりやすいのでは、伝わるのでは、と提案してきたという。

 今回も、黒田は全部しゃべりに帰ってきたのではないだろうか。MLBで得たもの、技術にせよ、姿勢にせよ、すべてを後輩たちに伝えるために。もしかしたら、黒田が失くしたものもあるかもしれない。それもNPBで彼が投げることではっきりするのではないだろうか。もちろん時間の経過はあるし、8年前のNPBとは違う(そもそもボールが全く違う)のだが、その違い自体も黒田が語れば、何かしらが加わって後輩たちの実になるのでは、と思う。

 2016年にはMLBのマウンドを踏むであろう前田健太、次世代エースたる野村、大瀬、わたしが勝手に黒田級やでと思い込んでいる福井、and more. いや、投手に限ることではない。捕手も外野手も内野手も、みんな黒田と話してほしい。個人的にはもちろん會澤に黒田が知るマウンドからの景色を伝えてほしいのだが、たぶんそれは願わなくても実現する(なんとすばらしいことだ)。

 黒田の考えていることは連綿とつたわるだろう、と思うし、すでにわたしたちは2冊の黒田本を手にしているし、おそらくKKベストセラーズは著:黒田博樹の次の球を用意するだろう。そしておそらく黒田は出し惜しみはしない。

 

 黒田博樹が帰ってくること。それは、カープへ、あるいはもっと大きく、NPBプロ野球、さらに裾野の高校球児、草野球にいたるまですべてのプレーヤーと、それを応援する人たちへ向けられた黒田博樹の「愛」なのではないか、と思っている。

2014年に読んで面白かった本 5冊

 野球のことばかり書いていたけど、#28の人のことをこれ以上書いても中学生時代に好きだった子と偶然再会したあとに延々つきまとうような気持ち悪い文章しか書けないし、#27になった人は順調にやってるから特に書くこともない。強いていうなら、インタビューで答えを使い回すのは私のような気持ち悪いファンにはバレてるということくらいだ。外野守備について「1イニングに一度も球が飛んでこないこともありぶっちゃけこんなに楽かと思ったがキャッチャーというポジションの大変さを外から見られてよかった」という発言を、都合三度、ほぼ同じ言葉で見聞きしてる。そこまで再現できるということは逆に記憶力がスゴイのかもしれない。キャッチャーだし。

 

 野球から離れると私の人生にはとりわけ語るべきこともない。ので2014年に読んで面白かった本でも書いておこうと思う。順番はあくまで思い出した順で、他意はないです。

 

『オービタル・クラウド』 藤井大洋

オービタル・クラウド

オービタル・クラウド

 

  ちょっと先の未来を描いたSF。若干ジェバンニじみたキャラクターが出てくる部分はあるが、少なくともド文系人間には「わあリアルなSFだ!」と楽しめる作品だった。ド文系なので導電性テザーだとかケプラーだとか発射角だとかいうことは、正直分からない。分からないのだが、主人公がその軌道を想像するシーンは非常に肉体的で「そうなる」ことに納得がいく。

 宇宙に人間が作ったデブリが山ほど浮かんでいて、それが人間を阻む。傷つける。あるいは野望の手段となる。わざとデブリを作ることで、制空権のもっと上に制宙権が生まれうる。あと5年もしたら本当にそうなるんじゃないかと、ド文系は思った。

 

『猫舌男爵』皆川博子

猫舌男爵 (ハヤカワ文庫JA)

猫舌男爵 (ハヤカワ文庫JA)

 

 われらが皆川先生も御年84歳。でも表題作、滅茶苦茶若い。表題作は『猫舌男爵』という日本の短編をどうにか翻訳しようとするポーランドの学生と教授を中心に、日本の書評家(実名だ)などが登場する、書簡体小説。「ヤマダ・フタロ」短編集のなかで明らかに異質。といってもそれはまったく皆川博子という作家の側面で、さらにこの短編集ではおなじみの幻想文学もヨーロッパの路地裏も読めるので、非常にお得感がある。彼女を初めて読む人に勧めて作家像を混乱させたい。

 

『 ミドリのミ』吉川トリコ

ミドリのミ

ミドリのミ

 

  去年『ぶらりぶらこの恋』を読んで、内容はそこまで楽しめなかったものの文章の作り出す風景が異常になまなましい人だなと思った。で、こちらは両親が離婚したミドリちゃんと彼女を引き取った父親とその浮気相手である男性の「一家」、あるいはその周りを描いた作品。情けない父親とその恋人(にしかなれない、日本では)のやりとりが、恋人なんだけれど、娘がいるときは家族にならなければいけなくて、という、「別に同性愛じゃなくてもいい悩み」を自然と書いていて、そうだよな、別になにもかもが違うわけではないんだよなあ、と思わせる。一方でゲイカップルだから発生する軋轢もあって……そのバランスが絶妙。さらに最終章、リベラルぶって同性愛に積極的に肯定の声をあげてる人間がドキッとするようなセリフも出てくる。この人は物語と、風景と、やりとりと、全部うまい、と思った次第。

 

 『イベリコ豚を買いに』野地秩嘉

イベリコ豚を買いに

イベリコ豚を買いに

 

「こんなものは本物のイベリコ豚とは言えませんね」

「なぁにぃ~!?」

「三日後に来てください、本物のイベリコ豚を……っと、そうだ、おたくの国には口蹄疫で輸出できないんだった、メンゴ」 

「くそっ、だったら食いに行ってやる!」

 という経緯でイベリコ豚のためにスペインに渡り、いろいろあって豚を購入するはめになり、最終的にいかに加工して商業ラインに乗せるかというノンフィクション。とにかくイベリコ豚の生ハムが食べたくなる。セボ、レセボ、ベジョータとランクがあり、ベジョータはとろけるほどうまい、らしい。Amazonでベジョータの原木を探したら86,940円もした。肉に払う値段とは思えない。86,940円の余裕がない人間はとりあえず読むだけ読んで枕を濡らす。食べたい。

 

 『プロフェッショナルの情報術』喜多あおい

プロフェッショナルの情報術 なぜ、ネットだけではダメなのか?

プロフェッショナルの情報術 なぜ、ネットだけではダメなのか?

 

 TV番組などのために情報を集めてくる「リサーチャー」という仕事をしている人が書いた本。この喜多さんという方は数々のバラエティやドラマのリサーチを担当されている。「フリーター、家を買う」「家政婦のミタ」「Qさま!!」「行列の出来る法律相談所」と、いわゆるヒットメーカーなのだ。本書ではリサーチ技術について非常に深く書かれている。が、それ以上に面白かったのがクライアントからいかに情報を引き出すか、という部分。つまりクライアントが「何を欲しがっているか」を限りなく具体的にかたちどることで、時間のロスを減らし、より深度と確度の高い情報をとってくることができる、というわけだ。人の話を聞くとき全般に応用できるし、情報の整理がうまい人が書いた本はやはり読みやすい。

 

というわけで誰彼かまわず勧められる本は以上。『○○○○○○○○殺人事件』とか面白かったけど安易に勧めると皆さんのお宅の壁が傷む危険性があるので。いや、いい本ですよ。バカミスが好きなら。