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2014年に読んで面白かった本 5冊

 野球のことばかり書いていたけど、#28の人のことをこれ以上書いても中学生時代に好きだった子と偶然再会したあとに延々つきまとうような気持ち悪い文章しか書けないし、#27になった人は順調にやってるから特に書くこともない。強いていうなら、インタビューで答えを使い回すのは私のような気持ち悪いファンにはバレてるということくらいだ。外野守備について「1イニングに一度も球が飛んでこないこともありぶっちゃけこんなに楽かと思ったがキャッチャーというポジションの大変さを外から見られてよかった」という発言を、都合三度、ほぼ同じ言葉で見聞きしてる。そこまで再現できるということは逆に記憶力がスゴイのかもしれない。キャッチャーだし。

 

 野球から離れると私の人生にはとりわけ語るべきこともない。ので2014年に読んで面白かった本でも書いておこうと思う。順番はあくまで思い出した順で、他意はないです。

 

『オービタル・クラウド』 藤井大洋

オービタル・クラウド

オービタル・クラウド

 

  ちょっと先の未来を描いたSF。若干ジェバンニじみたキャラクターが出てくる部分はあるが、少なくともド文系人間には「わあリアルなSFだ!」と楽しめる作品だった。ド文系なので導電性テザーだとかケプラーだとか発射角だとかいうことは、正直分からない。分からないのだが、主人公がその軌道を想像するシーンは非常に肉体的で「そうなる」ことに納得がいく。

 宇宙に人間が作ったデブリが山ほど浮かんでいて、それが人間を阻む。傷つける。あるいは野望の手段となる。わざとデブリを作ることで、制空権のもっと上に制宙権が生まれうる。あと5年もしたら本当にそうなるんじゃないかと、ド文系は思った。

 

『猫舌男爵』皆川博子

猫舌男爵 (ハヤカワ文庫JA)

猫舌男爵 (ハヤカワ文庫JA)

 

 われらが皆川先生も御年84歳。でも表題作、滅茶苦茶若い。表題作は『猫舌男爵』という日本の短編をどうにか翻訳しようとするポーランドの学生と教授を中心に、日本の書評家(実名だ)などが登場する、書簡体小説。「ヤマダ・フタロ」短編集のなかで明らかに異質。といってもそれはまったく皆川博子という作家の側面で、さらにこの短編集ではおなじみの幻想文学もヨーロッパの路地裏も読めるので、非常にお得感がある。彼女を初めて読む人に勧めて作家像を混乱させたい。

 

『 ミドリのミ』吉川トリコ

ミドリのミ

ミドリのミ

 

  去年『ぶらりぶらこの恋』を読んで、内容はそこまで楽しめなかったものの文章の作り出す風景が異常になまなましい人だなと思った。で、こちらは両親が離婚したミドリちゃんと彼女を引き取った父親とその浮気相手である男性の「一家」、あるいはその周りを描いた作品。情けない父親とその恋人(にしかなれない、日本では)のやりとりが、恋人なんだけれど、娘がいるときは家族にならなければいけなくて、という、「別に同性愛じゃなくてもいい悩み」を自然と書いていて、そうだよな、別になにもかもが違うわけではないんだよなあ、と思わせる。一方でゲイカップルだから発生する軋轢もあって……そのバランスが絶妙。さらに最終章、リベラルぶって同性愛に積極的に肯定の声をあげてる人間がドキッとするようなセリフも出てくる。この人は物語と、風景と、やりとりと、全部うまい、と思った次第。

 

 『イベリコ豚を買いに』野地秩嘉

イベリコ豚を買いに

イベリコ豚を買いに

 

「こんなものは本物のイベリコ豚とは言えませんね」

「なぁにぃ~!?」

「三日後に来てください、本物のイベリコ豚を……っと、そうだ、おたくの国には口蹄疫で輸出できないんだった、メンゴ」 

「くそっ、だったら食いに行ってやる!」

 という経緯でイベリコ豚のためにスペインに渡り、いろいろあって豚を購入するはめになり、最終的にいかに加工して商業ラインに乗せるかというノンフィクション。とにかくイベリコ豚の生ハムが食べたくなる。セボ、レセボ、ベジョータとランクがあり、ベジョータはとろけるほどうまい、らしい。Amazonでベジョータの原木を探したら86,940円もした。肉に払う値段とは思えない。86,940円の余裕がない人間はとりあえず読むだけ読んで枕を濡らす。食べたい。

 

 『プロフェッショナルの情報術』喜多あおい

プロフェッショナルの情報術 なぜ、ネットだけではダメなのか?

プロフェッショナルの情報術 なぜ、ネットだけではダメなのか?

 

 TV番組などのために情報を集めてくる「リサーチャー」という仕事をしている人が書いた本。この喜多さんという方は数々のバラエティやドラマのリサーチを担当されている。「フリーター、家を買う」「家政婦のミタ」「Qさま!!」「行列の出来る法律相談所」と、いわゆるヒットメーカーなのだ。本書ではリサーチ技術について非常に深く書かれている。が、それ以上に面白かったのがクライアントからいかに情報を引き出すか、という部分。つまりクライアントが「何を欲しがっているか」を限りなく具体的にかたちどることで、時間のロスを減らし、より深度と確度の高い情報をとってくることができる、というわけだ。人の話を聞くとき全般に応用できるし、情報の整理がうまい人が書いた本はやはり読みやすい。

 

というわけで誰彼かまわず勧められる本は以上。『○○○○○○○○殺人事件』とか面白かったけど安易に勧めると皆さんのお宅の壁が傷む危険性があるので。いや、いい本ですよ。バカミスが好きなら。